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Let's Animate 作画

東京都市大学 アニメーション

作画って何?

作画とは、アニメーション作品における制作工程のことで、「原画」と「動画」をまとめた作業工程を指します。

通常、アニメ制作では、原画と動画をまとめて作画と呼ぶことが多いですが、 今回のプロジェクトでは、原画と動画にあえて分けて描かず、担当のトランザクションを原画も動画も作画としてその人1人が行う作り方をしています。

複数の絵 出来上がったアニメーション

パラパラ漫画のように一枚一枚、少しずつ動きのある絵を何枚も何枚も描いていきます。 すごく地道で、でも楽しい作業で、アニメ制作の肝となります。 そのため、もっともフィジカルで、プリミティブで、フェティッシュな工程と言えます。

どうやって作んの?

作り方

今回のプロジェクトは、すべてのメンバーが東京都市大学の学生で構成されており、絵は描いたことあるが、アニメを描いたことがある人は、ほとんどいませんでした。

唯一描いたことがある山下(監督)も小学生の頃に”うごくメモ帳3D”という任天堂3DSのソフトでパラパラ漫画を描いたことがある程度でした。

ただし、作画オタクでもあり、どのように描かれているか、他のメンバーよりも少しだけ何となくイメージはついていたつもりだったので、山下が主導となり、手探りで作画作業を進めていきます。

とりあえず、原画と動画には分けず、絵コンテのページをごとに、一人一人担当のシートを作成し、とりあえず各自で描いてもらいます。

決めたルール

ルール

  • 原画と動画(中割)に担当をわけず、まとめて作画として担当。
  • 画面比16 : 9(1280 * 720)で統一
  • フレームレートは指定しない。
  • はキャラデザを参考に塗る。
  • は0~2影まで塗る。例えば、動きが多いシーンやキャラクタが小さいシーンなどは影は書かなくても良い。
  • 背景は描かず、グリーンバック(#00FF00、RGB(0,255,0)、HSV(120,100,100))で描く(背景が動く場合は描いてください)
  • ソフトは指定しない。(iPad: FlipaClip, Procreate, ibisPaintX / PC: CLIP STUDIO 等)
  • 絵コンテで細かく指定されていない芝居などは、作画に委ねる。

担当わけ

作り方

絵コンテを共有し、担当したい希望のシーンを選んでもらい、どこでもいいという人は山下(監督)が割り振り、GoogleSpreadSheetで管理しました。 基本的に各自で作業を行い、Discord上で進捗共有と議論を重ねました。

作画作業

東京都市大学で作画作業

担当を決めたら、各自で作画作業に入ります。 9割のメンバーは絵の経験こそあれど、パラパラ漫画のようにアニメーションさせるのは初めての経験なので、定期的に進捗をオンライン(Discord)で共有しながら進めました。

たまに、対面で作業回も行いつつ、合宿という名目で、江ノ島で民家を借りて、作画作業も行いました!

缶詰作画合宿についてはこちら

様々な問題

作画を進めていく上で、さまざまな問題がありました。

未経験によるノウハウ不足

山下作画

まず、全員がアニメ未経験で進めるため、どうやって絵を動かせばいいのかわからないという声がありました。これらは、まずやって進捗を上げてもらいFBを行いつつ修正を行うという方法でなんとなく出来上がっていきました。

かくいうプロジェクトのリーダである山下(監督)もアニメを作ったことがあると言っても趣味の範疇を超えず、ましてやこの人数の規模の制作は行ったことがありません。

ノウハウの不足はしょうがないですが、大学生でこのような機会と経験は貴重であり、失敗してもそれもまた幸福であること、そして何よりアニメ作りが楽しくてしかったなかったので、そういうメンタリティで解決?しました。

チームビルディング的問題

私はデジタルクリエイティブが好きですが、チームをまとめるということがそこまで得意ではないかもしれません。

私はみんなのモチベーションを持続させるために、できるだけポジティブな言葉だけを使うようにしていて、基本的には肯定します。 また、他人の失敗には甘く、何事も下からお願いするという感じです。

そういう甘いスタンスだとモチベーションを保ってくれる一方、締め切りの厳守が疎かになってしまう場合がありました。 そこは厳しい面と、甘い面を両立させることが重要なのかもしれません。そこで、厳しい顔をメンバーの1人が担ってくれたので、その点はありがたかったです。

作画チーム 作業中

ここまで人数が多いと、色々な人がいます。これは偏見ですがクリエイタの方々は変わった人が多いです笑

そして全員がお互い面識があるわけでもなく、学年もバラバラなので誰か1人が暴走するとメンバが怖がってしまします。

いきのいいクリエイタたちの手綱を握ることを要求されましたが、それは2022年にデジコンの会長をやっていた時に散々経験していたので、そこまで苦労はしなかったです。

缶詰作画合宿

江ノ島の民家で作画作業

江ノ島に合宿に行って、作画を進めるということもしました。これも結構いくまでが大変でした。

まず雑談から私が急に合宿をやりたいと言い出し、夏休みが始まってから計画を始めた感じでした笑 だってそういうの憧れるじゃないですか。わかりますよね 私はこの突発的に行動をできるところが自分の最も強い部分だと思っていますが、この計画性のなさは時どき損失を生みます。

15人くらいのメンバーを集めて計画していましたが、宿を予約して支払いを完了したところで、参加予定だった後輩の女の子たちがさまざまな理由で辞退を始めました。

詳細がギリギリまで決まらず、ずっと危うい感じで進められた計画で、不安感があるのはかなり理解できますから、そこまで理不尽な話ではないですが、私のお財布のダメージ、つまり金銭的損失が大きく、また彼女たちには信頼を置いていたうえに、私自身も結構楽しみにしてたので、そこそこ残念でした。

その時の気分はさながら、労働争議が行われる会社の気分、兵を引き連れた部下に、お寺と一緒に焼かれる戦国武将の気分でした笑 でも合宿自体はとても楽しくて、この話も面白い話なので、今となってはいい思い出です。

絵柄問題

おこげさんの描いた主人公 にむにむさんの描いた主人公

絵柄やアニメーションに個性が出ることを推奨する私の方針とは違い、メンバーの中にはもっと厳格に絵柄を揃えるべきだという意見も多々見られました。

私はこのプロジェクトは制作会社でも専門学生でもなく、現代を生きる理系の大学生である私たちがアニメを作ることに意味を見出そうとしています。 だって、世田谷区もアニメを作って欲しいなら制作会社に任せればいいじゃないですか。

でも、そうしなかったのは、予算や行政的立場、区の方針という要因以外にも期待できることがあるからだと思います。 例えばアニメ作りをきっかけにして、区内の大学生と区の交流が実現しています。

そして大学の広報課と地域連携課を通すことで大学と区お互いのPRにも一助できました。それに私たちが武蔵工業会館で話し合いを行うことで、現役学生と校友会の人たちとの関わりも生まれます。そのほかさまざまな副作用があります。

正直専門学生ならもっと優等生的な作品が作れると思います。 悔しいですがそれは認めざるを得ません。しかし、専門学生に勝てる部分が私たちにもたくさんあります。 例えば、テクノロジー。 使える最新の技術を迅速に導入できることが最も会社としてリスクを抱える会社や、学んでいない専門学生にはできないことだと思います。

絵が描ける人も、音楽の才能を持つ人も、CGができる人も、Webやプログラミング、AIが使える人、色々な才能を全て自給できることもユニバーシティの利点じゃないでしょうか。

キャラクターデザイン

そして、1人1人の個性が出ていることも大学生が作ったアニメという感じがして、とてもいいです。 大学生が作ったアニメなんてそうそうあるもんじゃないし、その方が面白い。

もちろん、絵柄にばらつきがありすぎて、見ている人が混乱することは大前提作品の質的に問題です。 絵を揃えられる余裕がないこと、報酬を払えないことなど色々理由はありますが、手を抜きたいという意味ではなく、私たちは全力で作っています。 ただし私はみんなの個性が出ている映像の方が好きだし、作っていて楽しいです。

と、私は思っても、もちろんみんながそういう意見ではありません。 やっぱり、テレビで放送されているアニメを見てきたのだから絵柄を揃えるのは当たり前に感じます。 トレンド的にも、「君の名は」や「鬼滅の刃」、「呪術廻戦」などどこで絵を止めても絵がくずれていないこと、そして美術が優れていることがよしとされる風潮にありますが、写実的であることよりも、やはりアニメである意味をもっと強調してもいいと思います。

ナルト 作画 アニメーター 金田伊功

「ナルト」や、「フリクリ」、「クレヨンしんちゃん」や伝説的なアニメータである「金田伊功」さんのシーンなど一枚絵で見せるというよりは、動きやアクション、絵柄で魅せるアニメも評価が高い作品は多く、むしろそのようにアニメにしかできない表現をしたいです。 アニメっぽい動きを再現したいですが、これは思っているよりも難しい。 (ちなみに上のナルトの画像は作画崩壊と言われいますが、作画崩壊ではありません💢)

アニメは芸術なので、こうして良いとする作品の完成は人によって違って、意見が合わないことはあると思います。 でもそうやって、意見が違えることが集団で作品制作を行うことの醍醐味であり、創作活動をしているという実感がありました。

なにより意見を言ってくれるのは何よりも嬉しくて、彼らも良い作品を作ろうとしていることが感じられてすごくありがたかったです。

Discordサーバ上で議論していたので、怖がってしまう方もいましたが、私は、そうやって意見を言ってくれる信頼のおけるクリエイタはをメンバーとして欲しているかに思います。

kinokontaさんのかわいいカット

ともあれ、山場である作画の作業は乗り越えたので、引き続き頑張っていきましょう。